本格簡単ダイポールアンテナの製作

ダイポールアンテナ  無線については全くの素人ですが、ネットや文献で調べて自作したところ、満足できる性能のアンテナができましたので記録として掲載したいと思います。

 私の住む市では防災ラジオとして、同報無線(広報)も受信可能なラジオが有償(リズム時計工業株式会社の防災ラジオ.自治体負担有り)で配布され、これは便利と我が家はそれを購入しました。電柱上の広報のスピーカーから流れる放送は、いつも肝心なところが聞こえなかったからです。しかし、付属のロッドアンテナを立てただけでは、電波が弱くごくまれにしか受信できませんでした。そこで同報無線を安定して受信するべく外部アンテナを製作しました。同報無線用に作ったアンテナですが、思いがけず通常のFM放送もかなり強力に受信できるようになったため、FM放送を聞く機会も増えました。

同報無線について

同報無線  自治体によって異なると思いますが、私の住む市では朝7時、正午、夕方5時の時報、そして注意報・警報や行方不明の連絡などが放送されます。同報無線の周波数はFM放送のちょっと下の周波数帯の60MHzから70MHz辺りが一般的なようです。そして電波の送信方法には水平偏波と垂直偏波がありますが、私の市の同報無線は69MHzの周波数、垂直偏波で市役所屋上から送信されています。家の近くの広報のスピーカーを探して、その電柱に取り付けられているアンテナを確認すると、同報無線の電波の来る方角と、水平偏波か垂直偏波かが判ります。私の住む市では八木アンテナのエレメントが垂直の状態に取り付けられていますから、垂直偏波と判断しました。同報無線やFM放送の周波数帯(超短波)は基本的に直線見通し間で届くので、できるだけ市役所方面に開けた場所にアンテナを設置しなければなりません。

ダイポールアンテナについて

ダイポールアンテナ  左図に半波長ダイポールアンテナの構造を示します。波長は真空中(空気中)の電波の波長で記号λで表されます。波長を求める式は、λ=300/Fでこの時のFは周波数で単位は[MHz]、λの単位は[m]です。

 エレメントには取扱いの楽な普通のビニール被覆の電線を使いました。電波は高周波ですので電線が太ければ能率が良いという事もありません。エレメントの材質で性能が大きく左右されるということはないと思いますが、希望の周波数に対する長さが重要です。エレメントの短縮率は断面形状や面積に影響されますが、文献などを参考に0.97としました。69MHzの時、エレメントの長さは1.05mになります。

 ラジオやテレビのアンテナの入力インピーダンスは一般的に75Ωです。ダイポールアンテナは図中に示したように給電ポイントでの特性インピーダンスが73Ω(θが180°の時)です。同軸ケーブルにも75Ωのものを使えば、インピーダンスはマッチし電力効率が最大になります。テレビにもよく使われる3C-2Vという同軸ケーブルを使いました。20mで1000円以下でした。3Dや5Dなどの型番で始まるD系のケーブルはインピーダンスが50Ωですので注意して下さい。同軸ケーブルの長さは1/2λの整数倍に取ると定在波の影響を受けにくいとされますが、実際にはケーブルのはわせ方でも変化してしまいます。そこでバランが必要になります。同軸ケーブルの短縮率はケーブルによって0.67、0.8などがありますが。3C-2Vは0.67です。

 ダイポールアンテナを垂直偏波で使う時には、同軸ケーブルの内部導体側に接続したエレメントが上になるようにアンテナを立てるようにします。

バランについて

 ダイポールアンテナは電気的に平衡であるのに対し、同軸ケーブルは不平衡です。アンテナを単純に同軸ケーブルに繋いだだけでは、同軸の外部導体に漏洩電流が発生しそれが定在波となり、不要輻射を起こしS/N比が低下してしまいます。そこでバランを使うのですが、一般的なバランはトロイダルコアを使ったもの代表的です。しかし測定器なしで本格的なバランを作るのは難しく、また今回はインピーダンスの整合も取る必要がない(アンテナと同軸ケーブル・ラジオの入力インピーダンスがほぼ等しい)ので、簡単で確実に不要輻射を防ぐシュペルトップというバランを採用しました。

 実際、目的の同報無線が問題なく受信できるようになるまでに、3つのアンテナを作りました。最後にバランを付けてやっと、安定した感度が得られるようになりました。バランを付けてからは、ケーブルを動かしたり、触ったり、丸めたりしても受信感度に影響しなくなり、バランの必要性を実感しました。

 シュペルトップバランは下図のように同軸ケーブルの先端部分に別の銅編線を被せるという簡単な構造です。3C-2Vに被せる銅編線は5Cから取ります。
シュペルトップバラン
 図のようにエレメントに接続する先端部を数センチ残し、1/4λx短縮率 距離をとって10mm程度被覆を剥いて編線を露出させます。短縮率は3C-2Vの場合0.67です。69MHzが対象周波数の時、編線を被せる部分は73cmになります。

 外側を覆う銅編線は5C-2Vから銅編線のみを充分長めに取り出します。カッターで慎重に編線を傷つけないようにまた手を切らないように注意して作業します。

 銅編線をうまく被せたら10mm被覆を露出させた部分に細い銅線で縛り全周にハンダ付けをします。銅編線をうまく同軸ケーブルになじませ、目的の長さ(73cm)の場所でカットします。

 銅編線に熱収縮チューブを被せて防水処理をします。あとは同軸先端の被覆を剥いて、アンテナのエレメントをハンダ付けします。

製作例

 水道用の塩ビ管(VP16)を使ったダイポールアンテナの製作例です。





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