電気の初歩

対象年齢:小学校高学年以上

電気とは何か
原子  電気の初歩というタイトルですので、電気とは何かという点についてほんの少しだけ解説したいと思います。答えから先に述べると、電気が流れるということは、電子が移動するということです。しかし、もう少し詳しく説明するためには、原子の話をしなければなりません。
 御存じの通り電気は銅や鉄などの金属の導体を流れることができます。金属も含めた全ての物質は、小さく分けていくと原子(元素)という最小の粒に辿り着きます。H2Oで有名な水は2つの水素元素(H)と1つの酸素元素(O)がくっついて水という物質として存在します。(これを分子といいます)これに対し、銅や鉄などAu, Feといった1つの元素だけで物質になるものもあります。(元素と原子は厳密には違いますがここでは特に区別しません。)
 右図は原子のモデルです。例として電線によく使用される銅の場合、核には29個の陽子があり、核の周りには29個の電子が回っています。陽子はプラス、電子はマイナスの性質を持っています。そして電気をよく通す物質の原子は、この電子が簡単に離れてしまうという性質を持っています。この簡単に移動してしまう電子を自由電子と呼びます。
電子の流れ  ここでもし、電池のプラスとマイナスを銅線でつないだ場合(実際にしてはいけません)どうなるでしょうか。銅の自由電子は浮気ものなので、より強い電池のプラス側に簡単に移ってしまいます。相手(自由電子)のいなくなってしまった陽子は、同じ様にとなりの陽子から離れてきた自由電子を簡単に受け入れます。これが銅線の中で同時に連鎖しておこり、電子は移動します。これが電気の流れ、つまり電流となるわけです。ところで、電子はマイナスからプラスに流れますが、電流はプラスからマイナスに流れると定義されています。これは電気を発見した時に、電子の存在が知られていなかったためだそうです。この陽子や電子、ましてや原子については、知らなくても電子工作は楽しめますが、知っていて損はありません。トランジスタなどの半導体を詳しく知ろうとするとき必要になる知識です。

電流・電圧・電力
 この3つの要素はしっかり把握しておかないと、電気回路を自分で組むことはできないので、しっかりと理解しておく必要があります。
 まず電流は電線の中を流れる電気の量のことです。電流の単位はアンペア(A)です。電圧は電流を流すための圧力で、電圧の単位はボルト(V)です。電力はその電気が仕事をする能力(仕事率)で、電力の単位はワット(W)です。電流と電圧の積が電力となります。

オームの法則
オームの法則

 このページを訪れた方ならもちろん知っているとおもいますが、一応オームの法則を・・・。左図の2つの回路は同じものです。電池のマイナス側はグランドといって電圧の基準となります。図中で用いている記号はそれぞれ、Iは電流で単位はAと書いてアンペア、Rは抵抗で単位はΩと書いてオーム、Vは電圧で単位はVと書いてボルトと読みます。記号Vは文献によってはEで表記されることもあります。電池の記号は長い方がプラスです。I, R, Vを求める式を3つ併記していますが、もちろん変形しただけで同じものです。
 ところで、抵抗Rは何のために使われるのでしょうか。抵抗の用途のひとつとして、電流がたくさん流れ過ぎないようにする目的で使われます。マイコンなどのデジタル信号は電圧がH(高)かL(低)が基本です。電圧さえ判定できればよいわけで、たくさんの電流は必要ないのです。マイコンはとても少ない電流で動作するように設計されているので、電流はあまり流すことできないのです。デジタル回路ではHが5V、Lが0Vというのが基本です。


直流と交流

 電流には直流と交流があります。直流は電池に代表される電流で、1方向に電流が流れる電流です。普通の乾電池は1.5V, 006P(角電池)は9V、普通自動車のバッテリは12Vですね。コンピュータの信号は多くは5Vで動作しています。
 交流は時間とともにプラスとマイナスの極性が入れ替わる電流です。家庭のコンセントからは100Vの交流が供給されています。このコンセントの交流は1秒間に50回(または60回)という速い周期でプラスとマイナスが入れ替わっています。(東日本では50回、西日本では60回)何故家庭用の電源(商用電源)が交流なのかというと、いくつかの理由があります。ひとつは交流の発電機の方が構造が簡単な為。ひとつは電圧の上げ下げ(昇圧と降圧)がトランスという装置を使って簡単にできる為です。遠く離れた発電所から電線で供給される電圧はどうしても電圧が下がってしまいます。ですからもっと高い電圧で家の近所まで引っ張ってきて、家の近くの電柱に設置されたトランスで100Vに降圧されてから家庭のコンセントに引き込まれているのです。また、交流を直流に変換する(整流といいます)ことは簡単ですが、直流を交流に変換するには、ちょっと手間がかかります。
 また信号としての直流と交流には実に様々なものがあります。例えば音はマイクで交流電圧に変換されます。デジタルの世界は在るか無いかの世界が、音など、外界の現象をデジタルで扱う場合には、フィルタの処理などアナログの処理技術が必要になります。


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